小泉八雲『鮫人の恩返し』は涙が宝石になって終わり?泣けない場面と、橋での別れを読む

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困っている相手を助けたら、お礼に宝物をもらう。そんな恩返しの話だと思って『鮫人の恩返し』を読むと、途中で、あれ? となるところがあります。

涙が宝石になっても、必要な数にはまだ足りない。しかも、鮫人は頼まれたらすぐ泣けるわけではありません。 ここから、もう一度橋へ出かける話が続くんです。

小泉八雲の英語作品集『Shadowings』所収の「The Gratitude of the Samébito」公開本文を基に読んでいきます。鮫人は、ここではサメビトと読む海の異形の存在。以下は結末に触れます。

目次

最初の涙は、宝石を作るためではなく、世話をしてくれた相手への悲しみから

主人公の藤太郎は、瀬田の長橋で行き場を失った鮫人に出会います。怖い外見に驚きながらも話を聞き、自分の庭の池へ迎え、食べ物を与えます。

その後、藤太郎は三井寺で見かけた女性タマナとの結婚を望みますが、家が求める贈り物は一万の宝玉。手に入らないと思い悩み、食事も睡眠も取れず、床に伏せるようになります。

ここで鮫人に向けるのは、自分が死んだあと、誰があなたを世話するのか、という心配です。鮫人はその言葉を受けて悲しみ、涙を流す。その涙が、落ちると赤い宝石になります。

あっ、最初から宝石を持ってきて返したわけではないんだね。本文の順番では、相手を失う悲しみがあって、涙が出て、その後で宝石だと分かるんです。

藤太郎は喜んで元気を取り戻します。でも、数はまだ足りない。もう少し泣いてほしいと頼まれた鮫人は、今は本当の悲しみがないので泣けない、と答えます。

このやり取りからは、藤太郎の喜びと、鮫人の気持ちのずれも読めそうです。宝石の数だけを追う読み方を、ここでいったん止めてみたいね。

もう一度瀬田の橋へ。藤太郎だけでなく、鮫人にも帰る場所が見える

翌日、二人は酒と魚を持って橋へ行きます。鮫人はかつて暮らした竜宮の方を眺め、懐かしい日々を思って涙を流します。今度の悲しみは、帰れない場所を思う悲しみなんだね。

藤太郎が宝石を一万まで集めたころ、湖の向こうから音楽が聞こえ、宮殿が現れます。鮫人は竜の世界で赦しが出たのだろう、自分は呼ばれているのだと受け取り、別れを告げて橋から飛び込みます。

結末では藤太郎も贈り物を届け、タマナと結婚します。だから、一人がお礼をもらって終わるだけでなく、最初は行き場を失っていた鮫人にも、帰る方向が示される話として読めます。

日本語の本でも続けて読むなら、新潮社の『小泉八雲集』の目次に「鮫人の恩返し」があります。上田和夫訳の本です。ここまでの紹介は公開英語本文を基にした説明で、その訳文を転載したものではありません。

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読み返すときは、二度の涙の前に、鮫人が何を悲しんでいるかを見てみて。宝石になるという不思議だけでなく、池へ迎えた日から橋で別れる日までの、二人の関係も追ってみたくなるね。

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この記事を書いた人

うわさと事実を分けながら、都市伝説の由来や文化的背景を調べて紹介する編集部です。

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